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「ビゼーの1番を聴く」9・・・アンセルメとギブソン
今回はスイスのオーケストラ、スイスロマンド管弦楽団による二人の指揮者の
演奏を紹介します。

「エルネスト・アンセルメ(1883〜1969)」
スイス・ロマンド管の創設者、数学者にして、ドビュッシー、ラヴェル、ストラヴィンスキーと親交を結んだスイスの名指揮者アンセルメには二つの録音があります。

・ スイス・ロマンド管弦楽団
(1953年 スタジオ録音)
(1960年 11月 スタジオ録音)
旧録音は、この曲のおそらく初録音だと思います。新旧両盤ともにテンポ設定はほとんど変わりがありません。ただ聴いた印象はかなり異なり、旧盤ではがっちりとした構成感の感じさせ、幾分重さの残る演奏であるのに対して、新盤は幾分軽めで、ハイドンの交響曲に聴くような古典的な格調の高さを感じさせる名演でした。また、新盤にはテンポの動きの自然な柔軟さが感じられ、オーボエの色彩感豊かな響きは、ラテン的な華やかさを撒き散らしていました。


「アレキサンダー・ギブソン(1925〜1995)」
スコットランド生まれのギブソンは、活動の場がほとんどイギリス国内に限定されていましたが、シベリウスやイギリス作曲家の演奏には、渋く内容の濃い録音を残しています。
若い頃は、何でも振れるその職人気質が買われて通俗名曲を数多く録音しました。
晩年はN響にも来演し、燻し銀の芸風を披露してくれました。

・ スイス・ロマンド管弦楽団
(1968年 スタジオ録音)
ギブソンが、数多くの通俗名曲の録音を行っていた頃の録音。この録音も「アルルの女」
組曲とのカップリングでした。このLPを店頭で初めて見た時、起用したオケがアンセルメの手兵とも言えるスイス・ロマンド管で、しかも発売元がアンセルメと同じデッカだということで、かなり奇異に感じました。世評の高いアンセルメ盤があるのに、デッカがフランス音楽をさほど録音していないギブソンに、ビゼーを振らせたのかが疑問だったのです。実際に演奏を聴いてみても、その疑問を取り去る事はできませんでした。
オケは良く鳴っているし、各楽章のバランス感覚も見事です。ただあまりにも生真面目すぎて、若々しさとか純粋さといったこの曲の魅力が消えてしまっているような気がしました。
(2002.07.14)
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