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「第九を聴く」24 フランス系の指揮者たち ミュンシュとクリュイタンス
シャルル・ミュンシュ(1891〜1968)

アルザス地方ストラスブール生まれ、当時のストラスブールはドイツ領、ミユンシュはドイツ系の音楽一家の一員で、シュヴァイツァーも親戚筋にあたります。
パリ音楽院でヴァイオリンを学び、ワルターが常任指揮者であったライプツィヒゲヴァントハウス管のコンサートマスターの後に指揮者に転進、パリでオーケストラを組織後、パリ音楽院管(1938〜1946)ボストン響(1949〜1962)の常任指揮者。
1967年には新たに創設されたパリ管弦楽団の初代音楽監督に就任しましたが1968年に急逝。ミュンシュは活躍の場はフランス中心でしたが、ドイツとフランスの両方の教育を受け、フランス物だけではなく、ベートーヴェンやブラームスにも名演を残しています。

  ボストン交響楽団、ニューイングランド音楽院合唱団、
 S:プライス、A:フォレスター、T:ポレリ、Bs:トッツィ
  (1958年 12月)
ミュンシュの第九には、日本フィルとの来日公演のライヴがCD化されていましたが、出演者からのクレームが出て市場から回収されてしまい、いまや超レア盤と化してしまいました。
猛烈な速いテンポ、豪放磊落で健康的な第九です。次のクリュイタンスの演奏と比べると、第1楽章だけで5分近くの違いがあります。この曲に深さを求めず、爽快感を求める人向きの演奏。ボストン響の軽く明るい響きもこのネアカな雰囲気を助長していると思います。独唱も合唱も元気一杯でした。第1楽章のクライマックスでは、テインパニの加筆もあり熱気の奔流が凄まじく、特に第4楽章は、火山が爆発するようなやりたい放題といった演奏になりました。
楽譜も金管楽器を中心として、かなり加筆をしています。


アンドレ・クリュイタンス(1905〜1967)
ベルギーのアントワープ生まれ、アントワープの王立劇場の合唱指揮者としてスタート、同劇場の音楽監督の後、トウルーズ、リヨン、ボルドーなどのフランスの歌劇場の音楽監督を経て1949年からパリ音楽院管の音楽監督を1967年に没するまでその地位にありました。クリュイタンスといえばパリ音楽院管との一連の近代フランス物の録音が有名ですが、バイロイト音楽祭にもしばしば客演するなど、ワーグナーなどドイツ物の録音も残しています。

 ベルリンフィル、聖ヘドウィッヒ大聖堂合唱団、
  S:ブルーウェンスティン、A:マイヤー、T:ゲッダ、Bs:ガスリー
    (1957年12月 グリュネルワルト教会)
ベルリンフィル初のベートーヴェン交響曲全集中の1枚。遅いテンポの重厚な演奏です。クリュイタンスの個性よりも、未だフルトヴェングラーの影響が色濃く残るベルリンフィルの個性が出た演奏だと思います。特に弦楽器のうまさは特筆もの。ただティンパニが今一つで、第2楽章などリズムに乗りきれていない感じです。クリュイタンスの重いテンポも一因かもしれません。独唱、合唱ともに優れています。vor Gott直前の崩れ落ちるようなritが特徴的。
気になったのは教会内での残響の多い録音で、私が聴いたのは国内CDですが、細部が不鮮明であるのと、編集の切れ目が唐突であることで、聴いていて突然響き全体が変わってしまう部分がありました。
(2001.11.25)
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