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「展覧会の絵」を聴く26・・・小澤征爾、尾高忠明と山岡重信
「小澤征爾(1935〜)」
・ シカゴ交響楽団
(1967年 4月28日 スタジオ録音)
オザワ30代の録音。当時トロント響の音楽監督だった小沢征爾が、世界の桧舞台に大きく飛躍しようとしていた時期の録音です。この前年にウィーンフィルとベルリンフィルの指揮台に初めて立ち、翌年にはボストン響に初めて客演しています。
この「展覧会の絵」は、音楽が自由に呼吸していて曲の運び方が実に自然、この時期の小澤征爾の録音中では抜群の名演です。早めのテンポで清潔な「古城」の歌わせかた、スタイリッシュな「ヴィドロ」など、現代風な爽やかさも感じさせます。難を言えばカロリーがいささか低すぎることで、「カタコンブ」などすっきりとしすぎていて、多少物足りなさが見られる点でしょうか。
またシカゴ響の威力は絶対的で、名手ハーセスの吹くノーブルで輝かしい「プロムナード」や「サムエル・ゴールデンベルクとシュミイレ」のトランペットソロは、ほれぼれとする素晴らしさ。「ババヤーガの小屋」から「キエフの大門」では、オケの能力全開で、圧倒的なクライマックスを作り上げます。

「尾高忠明(1947〜)」
・ 300人のオーケストラ
(1980年 6月8日 NHKホールでのライヴ録音)
在京のオケのメンバーやフリーの音楽家たちを300人集めて、巨大なオーケストラ演奏会を開いたというもの。この催しは1977年に第1回が開かれ、この時は渡辺暁雄が「新世界から」を振りました。第2回めの演奏は1980年に開かれ、渡辺暁雄と尾高忠明が振り分け、渡辺暁雄は「フィンランディア」を振り、尾高忠明が「展覧会の絵」と「運命の力」序曲を担当しました。この模様は二回ともライヴ録音され、LPとして出まわりました。
とにかく巨大なオケで、ホルンなどの金管楽器は各パート20人前後という巨大オケ。オケのメンバーは、東京フィルと日本フィルのメンバーが中心となっていたようです。
この中の「展覧会の絵」は全曲ではなく、「プロムナード」「カタコンブ」「ババヤーガの小屋」「キエフの大門」が演奏されています。
「プロムナード」冒頭はトランペットソロではなく、何本かのユニゾン。これほどの人数ともなると細かなニュアンスなど表現できようもなく、尾高忠明の指揮も無難にまとめたといった域からは出ていません。メンバーの技術もバラツキがかなりあるようですが、とにかく巨大な響きが塊として迫って来る「キエフの大門」など、生で聴いたらさぞ凄まじかったのではないかと思いますが、録音で聴くと苦しいものもあり、後のバブルを予告するようなこのようなイベントも、確かこの回が最後となったと思います。

「山岡重信(1931〜)」
・ 読売日本交響楽団
 (1970年ころ スタジオ録音)
山岡重信が読売日響の指揮者だったころの録音。研秀出版から出た世界オーケストラ名曲集全17巻の「ロシア編」の1枚、このシリーズは、一般家庭向けの名曲が主となっていましたが、朝比奈隆のバッハや渡辺暁雄のチャイコフスキー、若杉弘のストラヴィンスキー、近衛秀麿らの珍しい録音があって、今となってはなかなかマニアックな内容となっています。
山岡重信の演奏は、大きな個性には欠けますが、前半部分は、早いテンポで手際良くまとめた好演。ただ後半になると、オケの限界が見え始め、「キエフの大門」など柔らかな響きを前面に押し出そうとする意図は見えますが、金管楽器の非力さが露呈し、特に後半のクライマックスでは腰砕けの状態となっていて、音程の不安定さと供にかなり興を削ぐ結果となってしまいました。
(2002.05.06)
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