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「展覧会の絵」を聴く35・・・マゼールとバーンスタイン
今回は、ニューヨークフィルの音楽監督のアメリカの指揮者二人の演奏です。

「ロリン・マゼール(1930〜)」
アメリカ人の両親のもと、パリに生まれた才人マゼールは、8歳にして指揮者、ヴァイオリニストデビュー、11才にしてトスカニーニに認められNBC響を振り、翌年にはニューヨークフィルの指揮台に立ったという大変な神童。18才でピッツバーグ響のコンサートマスターとなり、以後世界各地で指揮者として活躍、ベルリン放送響(1964〜1975)、クリーヴランド管(1972〜1982)、ピッツバーグ響(1988〜1996)の音楽監督のかたわらベルリン・ドイツオペラやウィーン国立歌劇場の総監督も歴任。ベルリンフィルの音楽監督にアバドが就任した1990年代以降はどうも影が薄くなっていましたが、2002年秋からはニューヨ−クフィルの音楽監督に就任する予定です。
マゼールの父は、ロシアの音楽家の家系で、曽祖父はロシア皇室の軍楽隊長、祖父はモスクワ帝室歌劇場のコンサートマスターだったそうです。その血を引くマゼールにはロシアの作曲家の作品を若い頃から積極的に録音してきました。「展覧会の絵」は、以下の3種の録音があります。
  フィルハーモニア管弦楽団(1962年)
  ニューフィルハーモニア管弦楽団(1971年)
  クリーヴランド管弦楽団(1978年)

・フィルハーモニア管弦楽団
(1962年 スタジオ録音)
マゼールが一番面白かった時代の録音、ロシア的な色彩の強く出た押し出しの強い演奏。「キエフの大門」の後半で3番トロンボーンを強調したり、「古城」でヴィオラの動きを際立たせるなど、何か違ったことを見せてやろうとする気持ちが見え見えの演奏ですが、まだやりたいことがあるのに理性で抑えてしまったような印象が残りました。やりたいことがあればもっと大胆な表現をして欲しかったと思います。
なお「サミエル・ゴールデンベルクとシュミイレ」の終結部は、ピアノ原典譜と同様にドレシシに変更。ラヴェル版の演奏としては最も早い時期の改変だと思います。


「レナード・バーンスタイン(1918〜1990)」

・ニューヨークフィルハーモニック
(1959年  スタジオ録音)
1958年にバーンスタインがニューヨークフィルの音楽監督に就任してまもなくの録音。
これまでのバーンスタインの録音は、大部分が同時代の現代音楽に限られていましたが、次第に名声が上がってくるに従い一般的な名曲の録音が増え始めました。
この「展覧会の絵」と同時期の「ボレロ」の録音から始まり、以後ニューヨークフィルと膨大な数の録音を行うようになります。
この演奏は、響きの厚ぼったい熱気のある密度の濃いもので、ニューヨークフィルもうまいし、高水準の演奏ですが、テンポの緩急の差を大きくとっていますが、各曲の描き分けは、いくぶん中途半端な印象です。
冒頭と終曲は遅いテンポその他の曲は比較的早め、「ババヤーガの小屋」から「キエフの大門」はぐっと遅いテンポで最後まで緊張感を持続させたさすがの出来ですが、バーンスタインとしては、特に閃きが感じられず平凡な出来でした。
(2002.05.25)
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