back top next
「悲愴」を聴く28・・・ロシアの指揮者たち5・・・スヴェトラーノフ
今回から再びロシアの指揮者たちです。

「エフゲニー・スヴェトラーノフ(1928〜2002)」

モスクワ生まれ、モスクワ音楽院でガウクに指揮を師事、
1954〜1964  ボリショイ劇場 主席指揮者
1965〜2000  ソビエト国立響(ロシア国立響) 音楽監督

最近まで、最もロシア的な指揮者として楽壇に君臨。フリーになった2000年以降は客演の日々を送り、N響にも客演しスケールの大きな芸風を披露してくれました。
スヴェトラーノフの「悲愴」は4種類の録音があり、いずれも交響曲全集中の演奏です。全てソビエト国立響とのスタジオ録音
 ・1967年
 ・1985年  映像収録
 ・1990年
 ・1993年

今回は、1967年と1990年の録音を聴いてみました。

 ・ソビエト国立交響楽団
 (1967年 モスクワ スタジオ録音)
スヴェトラーノフ初のチャイコフスキー交響曲全集中の1枚。
私は、70年代後半に廉価盤のLPとして大量に出たスヴェトラーノフの一連のロシア物でこの演奏を聴きました。オケはうまいけれども、やたらと粗い演奏だった印象がありました。
今回20年ぶりに聴いてみましたが、印象はかなり変わりました。予想?に反して、
スヴェトラーノフは過度の感情移入を避け、きっちりと楷書風に演奏しています。ただし表現に面白みに欠け変化に乏しく平凡な印象です。オケはベラボーにうまく、第1楽章展開部の猛烈なスピードも整然と進行。クライマックスでの金管楽器の咆哮もロシアのオケならではの荒々しさです。
しかし続く3つの楽章は、余韻に欠け荒っぽい演奏だと思います。このようなタイプの演奏を好む人もいるかもしれませんが、私は楽しめませんでした。


 ・ロシア国立交響楽団(ソビエト国立響)
 (1990年 モスクワ  スタジオ録音)
日本のポニーキャニオンがモスクワに出張しての録音。
全体に一定のテンポが支配した大地にしっかり足をつけた演奏。
基本路線は旧盤同様感傷を排除した演奏で、ロシア的な演奏を好む人には向かないと思います。
細部が緻密に練れていて、まるでベートーヴェンの交響曲を聴いているかのような、がっしりとした構成力のある名演でした。
第1楽章は、主部のアレグロ・ノン・トロッポも遅いテンポで進め、丁寧に歌う第2主題は早めに進行します。展開部の猛烈な早さはそのままですが、感情の嵐よりも落ち着いた静謐さを感じさせるのは巨匠の貫禄なのでしょう。
深い悲しみに満ちた彫りの深い巨大な第4楽章も良く、最後まで深い余韻の残る演奏でした。
(2003.06.07)
back top next