「ベートーヴェンの7番を聴く」73・・・独墺系の指揮者たち4 ベームその4
「カール・ベーム(1894〜1981)」

・ ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
(1977年 10月8日 ベルリン ライヴ録音)

ベルリンフィルとのライヴ録音です。この年の2月にベームはウィーンフィルと二度目の来日を果たしています。
尋常ならざる殺気のようなものが漂う鬼気迫る演奏でした。
オケを豪快に煽っていく様子は壮年期のベームそのままです。

第一楽章冒頭の最初の和音はバラけていますが低音からずしりと入ります。序奏で同じフレーズの繰り返す場面ではテンポを徐々に速めで緊張感を高めていました。
256、260小節のトランペットの延ばしにクレシェンド付加。
オーボエソロ前のコントラバスのピチカートなど松脂が飛び散るのが目に見えるような緊迫感。コーダの盛り上がりも鳥肌もの。

第二楽章の主題を奏でるヴィオラのヴィヴラートには音楽への共感が満ち、下で支えるコントラバスも表情豊か。
89小節の大きなクライマックスから一転ディヌエンドに変化する変転の見事さ。ピチカートの深い響きも印象的。

第三楽章の豪快な前後部分に挟まれた繊細にして羽毛の響きのような中間部の対比も素晴らしく、巨大なfffの後の227小節のpはmfとして大きくディミヌエンド。

第四楽章最初の和音が渾身の力を込めたような巨大な響きで始まります。続く主部も極めて快調。コントラバスのゴウゴウたる唸りも凄まじく、コーダでは興奮状態となったオケが終結部めがけて突っ走り、流れに乗り遅れたオーボエが420小節あたりで一人突出してしまっていました。
ベルリンフィルのようなスーパーオケが本気になると凄いものです。

全ての音がきっちり鳴っている正統派のベートーヴェンでありながら燃焼度の高いライヴのベームの凄さを思い知る名演。まさにドイツ音楽の神髄を聴いたという満腹感がありました。
終演後の会場も興奮状態。熱狂した聴衆の歓声と拍手が延々と続いていました。

今回聴いたのは、METEORが出していた非合法海賊盤。
ステレオ録音ですがテープヒスが大きく聞こえ、FM放送からのエアチェック録音そのままの音です。
(2011.10.01)