「ブラームスの3番を聴く」50・・・ハンガリー系の指揮者たち セルその2
今回はセル&クリーヴランド管のロシア楽旅の際のライヴです。

・クリーヴランド管弦楽団
(1965年 5月19日 レニングラード フィルハーモニー大ホール ライヴ録音)

ソ連国営レコード会社メロディアの海外演奏家シリーズ中の1枚。CDではARS NOVAから当日のコンサートライヴの模様がそのままの形で出ています。
この日のコンサートは、歌劇「どろぼうかささぎ」序曲(ロッシーニ)、「海」(ドビュッシー)、交響曲第3番(ブラームス)、アンコールはスラヴ舞曲第3番(ドヴォルザーク)が演奏されました。

スタジオ録音とは大きく異なったテンポ大揺れの灼熱の演奏。セルの演奏かどうか疑問を感じたほど、スタジオ録音と大きな違いがありました。

第1楽章第一主題のテンポが速いので異様に速く感じますが、演奏時間はスタジオ録音とさほど差はありませんでした。第1楽章23小節目のfpを極端に強調。第二主題の直前に大きくテンポが落とすなど、スタジオ録音では見られない大きな変化があります。リピートなし。

そっけないほど淡白な第2楽章に続く第3楽章はテンポを大きく動かした緩急自在の柔軟アゴーギク。
早いテンポで突き進む緊迫の第4楽章は、ヴィヴラートを大きくかけたヴァイオリンと強烈なホルンの咆哮が印象に残り、第2主題前のホルンのスラーをアクセントで強調させていました。終結部改変なし。

今回はメロディアのLPとARS NOVAのCDを聴きました。
1965年といえば、各国の放送局でステレオ録音がおこなわれ始めていた時期ですが、ソ連、東欧の放送局はステレオ機材の導入が遅れ、ムラヴィンスキーの70年代のライヴでもモノラルのものがあったりします。

この録音もLPはモノラル表示、一方のCDは多少ステレオ感があり、CDのADD表示はちょっと疑問。細部はCDが鮮明ですが強奏部分で音が大きくビリついていました。
ソ連崩壊後、国営メロディア社が所有していた音源はさまざまな形で海外流出。正体不明のレーベルからいろいろな形で出ていますが、ARS NOVAも今ひとつ素性がよくわからないレーベルです。
(2005.05.12)