「ブラームスの4番を聴く」34・・・・独墺系の指揮者たち3 カラヤン
「ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908 - 1989)」

今年没後20年、来年生誕100年を迎えるカラヤンのブラームスの交響曲第4番は映像を含め以下の12の演奏記録があります。

・フィルハーモニア管 1955年 スタジオ録音
・ウィーンフィル   1959年 ライヴ映像
・ベルリンフィル   1963年 スタジオ録音 全集
・ベルリンフィル   1968年 ライヴ録音  海賊盤
・ベルリンフィル   1973年 ライヴ映像
・ベルリンフィル   1974年 ライヴ録音  海賊盤
・ベルリンフィル   1977年 スタジオ録音 全集
・ベルリンフィル   1983年 ライヴ録音  海賊盤
・ベルリンフィル   1984年 ライヴ録音  海賊盤
・ベルリンフィル   1988年 スタジオ録音 全集
・ベルリンフィル   1988年 ライヴ録音  海賊盤
・ベルリンフィル   1988年 ライヴ映像  未発売

・フィルハーモニア管弦楽団
(1955年5月26日 ロンドン、キングズウェイホール )

1950年代初頭、イギリス・コロンビアは気鋭の指揮者二人にフィルハーモニア管を振らせてブラームスの交響曲全曲を録音しています。

第1番 1952年 カラヤン
第2番 1955年 カラヤン
第3番 1955年 カンテルリ
第4番 1955年 カラヤン

第3番がカラヤンでなくカンテルリとなった理由は判りません。(拙コラム「ブラームスの3番を聴く」でカンテルリの演奏は紹介済)。
このうち第2番以降の3曲はモノラルとステレオの両方式で録音され、カラヤンの第2番と第4番はLP期にはモノラルのみが発売。擬似ステレオ化されたLPが出たことはありましたがオリジナル・ステレオ録音の登場はCD期に入ってからでした。

カラヤン初の第4番の録音は、健康的で磨き上げられた音響の美しさで聴かせる演奏でした。
第二楽章88小節めの密度の濃いぎっしり凝縮した弦楽器の充実した響きは印象に残るものの、後のベルリンフィルとの演奏に聴かれたような低音部が一瞬早く出る重厚さはありません。
演奏全体が角の取れた丸い表現で第4楽章冒頭はレガート気味に柔らかに開始、第3楽章149小節のアクセント指示の部分までレガート。

第一楽章425小節めの内声部の生かし方、第三楽章の粋なリズム処理などカラヤンならではの洗練されたスピード感はあるものの、この曲には内省的な奥行きと余韻が欲しいと思います。

今回聴いたのは東芝EMIのCDとモノラルティクを疑似ステレオ化した国内盤LPです。CDはオリジナル・ステレオでの国内初発売盤ですが、リマスタリングが甘く響きが薄いのが気になりました。一方の疑似ステレオLPは音が硬く左右の広がりも不自然。これでは相当オソマツな音で演奏そのものが貧弱に聞こえました。
(2007.11.18)