「ブラームスの4番を聴く」33・・・・独墺系の指揮者たち2 クリップス
「ヨゼフ・クリップス(1902 - 1974)」

ウィーン生まれ、ワインガルトナーのアシスタントから始まり、ドルトムント、カールスルーエの市立歌劇場の指揮者を歴任後、1933年からウィーン国立歌劇場の指揮者。ナチスが台頭すると収容所に送られたりしていましたが、戦後フルトヴェングラーやカラヤンなどの主要な指揮者達が、演奏禁止処分にあう中でウィーンに戻り孤軍奮闘、ウィーンの音楽界の復興に力を注ぎました。
クリップスのブラームスの交響曲は1,2,4番の録音があり、第4番には2種の録音が残されています。

・ロンドン響       1950年 スタジオ録音
・フランス国立放送管   1954年 ライヴ録音

・ロンドン交響楽団
(1950年4月 ロンドン キングズウェイホール   スタジオ録音)

ロンドン響首席指揮者時代の録音。コンパクトにまとまったウィーン風の典雅な演奏でした。随所に現れる短いクレシェンドデクレシェンドを強く意識していて音にふくらみを持たせています。
第1,3楽章の後半から終盤にかけて僅かずつテンポと音量を上げ、自然な盛り上がりを演出する部分なども手馴れたもの。多くの指揮者がテンポを落とす第一楽章最後の2小節はインテンポで走りきっていました。

第三楽章冒頭はゆっくりと始まるものの、281小節からはティンパニの1拍目をズンドコ・ズンドコと強調し長大なクレシェンドを聴かせます。66小節からの木管楽器のスタッカートはさほどかけずにチャームさを演出。第四楽章冒頭では木管のバランスが大きいのがユニーク。第四変奏第2拍のアクセント強調はクナッパーツブッシュの解釈に似ています。各変奏の有機的な繋がりに欠け、音楽の流れが途中で途切れる印象です。
第10変奏の直前で響きが途中で切れているのは編集ミスかもしれません。

無理のない自然体のブラームス。すっきりとしたロンドン響の響きの中でウィンナオーボエのような軽い響きのオーボエの音が印象に残りました。

今回聴いたのは、キングから出ていた国内盤CDです。モノラル期のDECCA録音は各楽器をはっきり鮮明に浮き出したもの。音は明快ですがサクサクとし霜柱をふむような薄い響きが気になりました。
(2007.11.05)