「ブラームスの4番を聴く」42・・フランス系の指揮者たち ミュンシュ
シャルル・ミュンシュ(1891 - 1968)

アルザス地方ストラスブールの生まれ。ミユンシュの家系はドイツ系の音楽一家で当時のストラスブールはドイツ領でした。パリ音楽院でヴァイオリンを学び、ライプツィヒゲヴァントハウス管のコンサートマスターの後に指揮者に転進、パリ音楽院管(1938 - 1946)ボストン響(1949 - 1962)の常任指揮者。1967年には新たに創設されたパリ管弦楽団の初代音楽監督に就任した翌年急逝。

ミュンシュの活躍の場はフランス中心でしたがゲヴァントハウス菅のコンマス経験もあり、ベートーヴェンやブラームスにも名演を残しています。
ブラームスの交響曲は3番以外の録音があり、第1番と4番は2種類のスタジオ録音があります。
第4番には以下の二つの録音があります。
・ボストン響              1950年  スタジオ録音
・ボストン響              1959年  スタジオ録音

・ボストン交響楽団
(1958年10月28日  ボストン・シンフォニーホール   スタジオ録音)
ミュンシュのブラームスの交響曲演奏では、第1番、2番が大きな動きの火噴き系阿鼻叫喚のドラマティックな演奏でしたが、第4番は冷静沈着、明快にしてどっしりとしたテンポの一転の曇りもないブラームス。軽いフットワークのバスに支えられ、各声部が充実した響きで動きます。

一定のテンポ感で進行する第一楽章では展開部直前の156小節めで微妙にテンポを落とし、終盤の劇的なクライマックスでも冷静沈着。
第二楽章では健康的で穏やかなチェロの第2主題に心和むものがり、70小節めの後のヴィオラのしみじみとした歌のピアニシモとの対比も見事。
遅いテンポでがっしり聴かせる第3楽章では、154小節めからテンポを落としテヌート気味にメロディラインを聴かせるのはカラヤンと同じ解釈。

第4楽章のパッサカリアで第2変奏の遅いテンポの中での柔軟な動き、第8変奏のタメ、第10変奏の柔らか叙情、第13変奏の自然な加速など、迷いを感じさせずバサリバサリと処理していくミュンシュの棒さばきは実に鮮やか。落ち着いてじっくりと練り上げた終盤の盛り上がりも風格豊かなで実に素晴らしいものです。

充実した明るい人生を髣髴させる健康的でドイツ風正統派の名演でした。豊麗でしなやかなボストン響の機動力も聴きもの。このブラームスの演奏スタイルは弟子筋の小沢征爾に受け継がれています。

今回聴いたのは70年代にRCAビクターから出ていたRGC規格の廉価盤LP。靄がかかったような音で、響きの透明度不足が気になりました。
(2008.02.02)