モーリス・デュリュフレ(1923〜1988)

最初に自作自演の紹介です。

モーリス・デュリュフレ指揮
ラムルー管弦楽団、フィリップ・カイヤール合唱団
ステファヌ・カイヤ合唱団、
エレーヌ・ブヴィエ(MS)、グザヴィエ・ドゥプラ(Br)
マリ=マドレーヌ・デュリュフレ=シュヴァリエ(org)
(1959年ころ    スタジオ録音)

記念すべきこの曲の初録音。ディスク大賞受賞。
オルガンはデュリュフレ夫人です。

オケも合唱も特に優秀というわけではありませんが、フランスのオケ特有の軽い響きと柔らかな合唱が淡雪のように溶け合っています。
中でもホルンとファゴットの明るく華やかな独特の音は今ではすっかり聴くことができなくなった音です。

儚い夢のような音が教会の空間に静かに消えていくような、美しくも宗教的な雰囲気のある演奏でした。



「アニュスディ」でのホルンソロのあとのテンポの落とし方が絶妙で、「サンクトゥス」での落ち着いたクライマックスも印象的です。

「ピエ・イエズ」のチェロのソロも悲しみが満ち落ち着いた雰囲気でした。

「リベラ・メ」の怒りの日の凄愴な盛り上がりは二つの世界大戦を体験したデュリュフレの戦争に対する強烈な怒りの爆発のようにも聞えます。

自作自演ということもありますが、譜面に忠実、テンポの微妙なユレも自然で
単に作曲者自身の解釈を知るという貴重さ以上に気品のある魅力的な演奏だと思います。


「ピエ・イエズス」を歌うメゾソプラノのエレーヌ・ブヴィエは、アンセルメの「ペレアスとメリザンド」の録音やモントゥーがフランスに客演した際のベートヴェンの「第九」のライヴ録音もありますが、この演奏の時期はもう全盛期を過ぎていたのかもしれません。
あまり印象に残る歌唱ではありませんでした。


今回聴いたのは国内盤LPとCDです。

いくぶんヴェールのかかったような響きで録音はさほど良くありませんが、雰囲気は良く出ています。

(2017.03.05)