作曲の経過と録音史
今回はデュリュフレのレクイエムの作曲の経過と録音史です。

作品数の極端に少ないデュリュフレですが、レクイエムは第二次世界大戦中にフランス政府の委嘱で作曲されました。



1944年  (41歳)
     8月 パリ解放
     フランス政府より「レクイエム」委嘱される。

1947年  (44歳)
     9月「レクイエム」完成    第1稿 大編成オーケストラ 

    11月2日 放送初演
     
    ロジェ・デゾルミエール指揮フランス国立管弦楽団、合唱団
    ルーヴィエのソプラノ、モラーヌのバリトン、
    アンリエット・ピュィ・ロジェのオルガン
    
    演奏会初演は同年、ポール・パレーの指揮


1948年  (45歳)
    
    レクイエム 第2稿オルガンおよびチェロソロ、

1950年  (47歳)
 
    レクイエム 第1稿 デュラン社から出版 



1959年 (56歳)

   「レクイエム」 第1稿 初録音

       デュリュフレ指揮ラムルー管弦楽団
       この録音はフランス・ディスク大賞受賞

1961年 (58歳)
    
   レクイエム第3稿
オルガンと、ハープ、トランペット、ティンパニを伴う弦楽5部室内オーケストラ


続いて録音史です。

第1稿・・・大編成オーケストラ
第2稿・・・オルガンとソロチェロ
第3稿・・・小編成オケ


・1959年頃   デュリュフレ指揮ラムルー管弦楽団     第1稿


録音数が最近は増えてきたとはいえ、長い間デュリュフレ自身によるこの自作自演盤が唯一の録音でした。

自作自演後しばらく続くものがなく、2番目のものはオルガンによる第2稿のセントジョンズ・キングス・カレッジ聖歌隊のもの。
大編成オケによる2番目の録音は、10数年後のアンドリュー・デーヴィス指揮によるCBS盤でした。


・1974年  ゲスト指揮セントジョンズ・キングス・カレッジ聖歌隊  第2稿

・1977年  アンドルー・デイヴィス指揮ニュー・フィルハーモニア管
                    アンブロジアン・シンガーズ  第1稿



・1981年  レッジャー指揮ケンブリッジ・キングス・カレッジ聖歌隊 第2稿

・1983年  リチャード・ヒコックス指揮ロンドン響&合唱団     第1稿

・1984年  ミシェル・コルボ指揮コロンヌ管&合唱団        第1稿

・1985年  ロバート・ショウ指揮アトランタ響、合唱団       第1稿

・1985年  マシュー・ベスト指揮イギリス室内管弦楽団、
                  コリドン・シンガーズ  第3稿

しばらく第1稿による録音が続きます。

・1988年  スティーヴン・クロウベリー指揮
         ケンブリッジ・キングス・カレッジ聖歌隊
         イギリス室内管弦楽団           第3稿


第3稿の録音が出てくるのも作曲されて20年以上が経過してからでした。

・1990年  エドワード・ヒギンボトム指揮
        オクスフォード・ニュー・カレッジ聖歌隊
        カプリコーン                第3版

・1990年  エッベ・ムンク指揮
        ヴォックス・ダニカ、ボー・グレンベッヘ(Org)第2稿

・1992年頃 ウィリアム・ホール指揮
        マスターコラール・オブ・オレンジ・カントリー
        ラッド・トーマス(Org)          第2稿

・1992年  ゲイリー・グラーデン指揮
        聖ヤコブ室内合唱団 マティアス・ワーガー(Org)
                              第2稿

・1993年  M.ルグラン指揮ロンドン響 
        アンブロジアン・シンガーズ    第1稿

・1993年  ハインツ・ヘニッヒ指揮
        ハノーファー少年合唱団
        室内管弦楽団           第3稿

・1994年  デニス・キーン指揮
        ヴォイセス・オブ・アセンシオン合唱団・管弦楽団
                     第3稿

・1994年  ミシェル・ピクマル指揮
        アンサンブル・ヴォカール・ミシェル・ピクマル
        シテ島管弦楽団           第3稿




・1998年  チョン・ミュンフン指揮
        聖チェチーリア音楽院管弦楽団                 
第1稿

・1999年  プラッソン指揮トゥルーズキャピトル管
               オルフェオ・ドノスティアーラ合唱団  第1稿


・2001年  スーストロ指揮ブラバント管、合唱団        第1版

・2004年  フレドリク・マルムベルク指揮スウェーデン放送合唱団 第2稿

・2006年  エリック・ネルソン指揮
         アトランタ宗教合唱団
         アトランタ室内楽            第3稿

・2006年  堀俊輔指揮東京響、東響シンガーズ          第1稿

・2008年  ビル・アイヴス指揮
        オクスフォード・モードレン・カレッジ聖歌隊
        イングリッシュ・シンフォニア     第3稿

・2012年  トーマス・リーチ指揮
        リーズ大聖堂聖歌隊
        スキプトン・ビルディング・ソサエティ・カメラータ 第3稿

・2013年  ジョン・オドネル指揮
        ウェストミンスター寺院聖歌隊
        ブリテン・シンフォニア              第3稿

・2014年  T.フィッシャー指揮BBCウェールズ管 合唱団  第1稿


・2016年  スティーヴン・クロウベリー指揮
        ケンブリッジ・キングス・カレッジ聖歌隊
        エイジ・オブ・エンライトゥンメント管     第3稿


                                 

このように並べてみると、いわゆるベートーヴェンやブラームスの交響曲録音などのある器楽系の指揮者たちの録音が少なく、とりわけドイツ、オーストリア系の指揮者の録音は皆無。

器楽系の指揮者としてはイギリス人のアンドリュー・デーヴィス、韓国人のチョン・ミョンフム、そしてフランス人のプラッソン、スーストロくらいです。


ヒコックス、ショウ、コルボは合唱指揮者として名を上げた人たち。
ミッシェル・ルグランに至っては映画音楽の作曲家として有名な人です。

往年のフランス系の名指揮者による録音もなく、フォーレのレクイエムで2種の名演を残しているクリュイタンスやフルネにも録音がありません。

せめて初演者のデゾルミエールやパレーによる初演時のライヴ録音が残っていればとも思います。

これは曲そのもののポピュラリティの低さと、自作自演盤の存在が大きかったのが新しい録音が生れなかった理由なのかもしれません。




(2017.02.01)