「新世界よりを聴く」81・・・日本の指揮者たち3 渡邉暁雄その2
今回は渡邉暁雄の2つの録音を紹介します。

・ 日本フィルハーモニー管弦楽団
(1965年ころ   スタジオ録音 第2楽章のみ)

今回聴いたのは小学館の「世界の音楽」という書籍の附録ソノシートです。ソノシートとはいえ若林駿介氏、菅野沖彦氏によるバランスの良い非常に聴きやすいステレオ録音。

早めのテンポの中にロマンティックでテンポを揺らせた演奏。1961年録音に比べると、熟したうまさを感じさせます。26小節のフォルティシモでテンポを早め、終わりのコラール前での弦楽器の減速もごく自然。Un poco meno mossoも早めで通過、続くフルートとオーボエののびのびとした歌など、演奏者たちを自由に泳がせながら随所でアンサンブルを引き締める指揮者とオケの一体となったコンビネーションが聴きものでした。

・ 日本フィルハーモニー管弦楽団
(1982年 11月1,2日 入間市民文化会館 スタジオ録音)

日本フィルの自主制作CD。
私はこの録音の二年ほど前に、この組み合わせの「新世界より」の実演を聴きました。
当日のプログラムは、モーツァルトの交響曲第40番と小山清茂の鄙歌第2番、そして後半が「新世界より」で、アンコールはスラヴ舞曲の何番かだったと思います。

ところが翌日聴いた同じメンバーによるシベリウスの交響曲第2番の印象が強烈で、この時の「新世界より」の印象はほとんどありません。きちんと整理された演奏以上のものではなかったように思います。

このスタジオ録音は、きりりと引き締まった中に、深い歌と余韻が感じられる名演だと思います。第1楽章序奏ティンパニは2段打ち、経過主題前でぐっとテンポ落とし、続く第2主題はBABA型のスプラフォン版使用ですが、序奏4小節目のホルンは間を長めに採ったジムロック版と同じもの。リピート有り、リピート直前の173小節目にはチェロにトロンボーンを重ねていますがリピート後の2回目は重ねない、など見えない所でいろいろと手を加えています。

第2楽章は軽い響きで、淡い粉雪にふれるような繊細ではかなくも日本的な懐かしさが漂う演奏。第3楽章も早いテンポで隙がなく愉悦に満ちた中間部との対比も見事、256小節でのフルートにトランペットを重ねていました。

第4楽章は、実演でも感じたのですが、上品で整ったバランスが幾分もの足りなさを感じさせます。ホルンの跳躍以降のストリジェンドからのテンポの取りかたのうまさなど、後半は良いと思いました。
(2006.01.09)