「新世界よりを聴く」50・・・独墺系の指揮者たち3 カイルベルト

ヨゼフ・カイルベルト(1908 - 1968)
ドイツのカールスルーエ生まれで、17才でカールスルーエ国立歌劇場の練習指揮者として出発、後にバーデン国立歌劇場の音楽監督の後に、第二時大戦後はドレスデン国立歌劇場を立て直し、ベルリンやバイエルンの主要な歌劇場の音楽監督を歴任し、1968 年バイエルンで「トリスタンとイゾルデ」の上演中に劇的な最後を遂げました。

「新世界より」は2種の録音があります。
・聖チェチーリア音楽院管    1952年 ライヴ録音
・バンベルク響         1959年ころ スタジオ録音

・ バンベルク交響楽団
(1959年ころ    スタジオ録音)
コンヴィチュニーと同じくバンベルク響を振った新世界。独テレフンケンの看板指揮者だった時期のカイルベルト一連の録音で、テルデックからCDでも出ていました。

カイルベルトとバンベルク響との結びつきは深く、1938年にプラハに設立されたバンベルク響の前身であるプラハドイツフィルの初代指揮者がカイルベルトで、この録音当時も首席指揮者でした。
この演奏は、重厚堅牢な典型的ドイツ風の新世界ですが、秘めた熱気が凄まじく、コンヴィチュニー盤ほどの鈍重感はありません。ジムロック版使用。

第1楽章序奏は、10小節めの力を込めたティンパニの強打がズシリと響きます。19小節目から加速、22小節目のティンパニは2段打ち。主部に入ると1拍目にアクセントを付ける歌わせかたが音楽に多少の停滞感を生じさせます。ちょっと古いなぁ。リピートは無し。第2主題はAABB型。

第2楽章のクラリネットソロ後の64小節からのポコピウモッソは、第1ヴァイオリンの一音一音にアクセントを付けるのが特徴的。終結部の弦楽器のみによる室内楽的な部分でのつぶやくような孤独感は出色。
冒頭で鋭いキレを見せる第3楽章はがっちり図ったような3拍子。
第4楽章は気合の入り方が半端でなく、弓をべったり弦に付けた力の入った弦楽器、他の楽器が大きな塊として動き出し、オケ全体が地響きを上げて突き進むかのようです。96小節のヴァイオリンに微妙なポルタメント、216小節ホルンソリの裏のヴィオラ刻みでの冒頭16分音符にアクセント付加。終結部は壮大、猛烈にテンポアップを見せ、大きなクライマックスを演出していました。

コンヴィチュニーと同じオケの録音で、実直型の同傾向の演奏ですが、ひたすら誠実に熱く語る姿勢が好ましく感じました。

今回聴いたのは70年代にキングから出た廉価盤LPですが、固くレンジの狭い鈍い音。この時期のカイルベルトの録音はCDでも出ていますが、マスターテープの保存状態が悪く、あまり上質な音ではありません。


(2005.10.28)