「新世界よりを聴く」95・・・パターネ
「ジョゼッペ・パターネ(1932 - 1989)」

ナポリ生まれ、父はオペラ指揮者のフランコ・パターネ。8才でマスカーニの助手となり、19才で「椿姫」を振りデビュー。イタリア各地の歌劇場の指揮者を務めた後、スカラ座やベルリン・ドイツ・オペラ、メトロポリタンをはじめとした世界的なオペラハウスで活躍しました。パターネは驚異的な記憶力の持ち主で250ものオペラを暗譜で指揮することができたそうです。

・ ハンガリー国立交響楽団
(1980年ころ  スタジオ録音)

残された録音の大部分がオペラ録音のため、オペラ専門の指揮者としての印象が強いパターネですが、アメリカ響の音楽監督も歴任し、純粋器楽のコンサートでも優れた演奏を聴かせたそうです。この「新世界より」は数少ないパターネの器楽曲の録音。私の知る限りでは唯一の交響曲録音だと思います。

歌心溢れる中に民族的な味わいにも不足せず、サラリと流した職人技の光る演奏でした。

第1楽章序奏は速いテンポで流れ22小節めのティンパニは2段打ち。主部は比較的遅く進行。リピート有り。第2主題はBABAのスプラフォン版使用。
清潔感溢れる第2楽章も良く歌う演奏で、第3楽章中間部ののどかな木管楽器には民族的な趣が漂います。

第4楽章も自然に流しながらオケを充分に鳴らし音楽に大きなふくらみと緊張感が感じられるのが素晴らしいと思います。トランペットが入る92小節めの直前でタメをつけ次第にテンポを速め大きな頂点を築いていました。

心に深く残る大名演ではありませんが手際の良い自然体の演奏でした。柔らかでメロウなオケの軽い響きも印象的。

今回聴いたのはハンガリーのフンガトロンのCD。バランスの良いふくよかな再生音。
(2006.04.01)