「幻想交響曲を聴く」49 日本の指揮者たち4・・・小林研一郎

小林研一郎(1940 - )
福島生まれ、東京芸大で作曲を石桁真礼生、指揮を山田一雄、渡辺暁雄に師事、1974年ブタペスト国際指揮者コンクール一位。東京響の正指揮者、日本フィル、京都市響の常任指揮者、ハンガリー国立響(現ハンガリー国立フィル)音楽総監督を歴任。現在日本フィル音楽監督、ハンガリー国立フィル、名古屋フィル桂冠指揮者、チェコフィル常任客演指揮者など。

コバケンさんと言えばハンガリー、チェコでの活動が有名で、2002年「プラハの春」国際音楽祭でのオープニングコンサートでチェコフィルを振り「わが祖国」全曲を演奏したことが印象に残ります。幻想交響曲は現在3種のCDが出ています。

・ハンガリー国立響  1990年   ライヴ録音
・日本フィル     1993年   スタジオ録音
・チェコフィル    1996年   スタジオ録音

・チェコフィルハーモニー管弦楽団
(1996年6月3 - 5日 プラハ芸術家の家 ドヴォルザークホール スタジオ録音)
コバケンさんは90年代に入ってからオケを変え、実に3度の正規録音を行っています。
それだけ、こだわりがあるということでしょうか。

演奏はさすがに見事なもので、濃厚なロマンティシズムの漂う濃い口の演奏。
深い余韻と歌に満ちた演奏で、録音バランスも良く、スケールの大きな名演だと思います。

イデーフィクスでチェロとベースのぶ厚い刻みを強調しているのが印象に残りました。エネルギーに満ち大きく展開していく振幅の大きな第1楽章、鋭い切れ味で血が迸るような第4楽章など聞かせ所いっぱいの演奏です。第5楽章「怒りの日」直前の弦楽器の下降音型最後は、楽譜の指定pppではなくfで演奏していますが、これが実に雄弁。

ただ指揮者の熱い思いが過度のあまり、第2楽章がゴージャス過ぎるように思います。第3楽章ももう少し清楚な方が良いように思いました、これはあくまでも私の好みですが。第3楽章最後のティンパニが弱すぎるのも不満。

チェコフィルはターリッヒ、アンチェル時代の全盛期には及ばぬとはいえ、緊密なアンサンブルで、東欧を代表する名門オケの面目躍如たる素晴らしい演奏を聞かせてくれます。


(2004.11.07)