「ラフマニノフの2番を聴く」34・・・イヴァン・フィッシャー
「イヴァン・フィッシャー(1951 - )」

ブタペスト生まれ、兄も指揮者のアダム・フィッシャー。5才の時に作曲家のコダーイに教えを受ける。バルトーク音楽院でチェロと作曲を学び、ウィーンでスワロフスキーに師事。その時期アルノンクールの助手として古楽を学ぶ。1976年ルパート指揮者コンクールに優勝後イギリス各地の有名オケに客演。1983年に故郷ハンガリーに戻り、ブタペスト祝祭管を創設。

・ ブタペスト祝祭管弦楽団
(2003年 10月 ブタペスト The Italian institute  スタジオ録音)

近代フランスの作曲家の作品を聴くような軽くしなやかな響き、そして表情豊かな歌心が魅力的な名演。オケはどうやら対向配置のようでチェロ・バスが左側から聞こえてきます。今まで聴いた中では対向配置で演奏している唯一の録音。

第1楽章序奏は柔らかな開始。速いテンポで弦楽器の旋律を短めに切り上げるユニークな解釈で、あたかも暗闇の中でひそひそ声の会話を聴くような趣。練習番号22にあるcalandoのテンポの落とし方のひっそり感が実に絶妙。最後のティンパニはなし。

第2楽章Moderatoの甘く優しいヴァイオリンの歌、Con motoの最終部分の遅く消え入るような減衰感が見事。アチェレランドの直前ではテンポを落とし、序奏をつけてスパートするようなテンポ変化を見せます。練習番号42の9小節めのトロンボーンのUn poco marcartを強調。

サラリと仕上げた第3楽章では練習番号51以降で咳き込むような加速を聴かせ、盛り上がりの頂点で大きくテンポを落とします。後半のホルンソロ前の長いパウゼも印象的。
室内楽的な緻密さで聴かせる第4楽章も、オケを存分に鳴らしながらも少しもうるさくないのがお見事。後半からテンポを揺さぶり変化をつけながら大きく盛り上げていました。

室内楽的な緻密さと暖かな音色、ピアニシモの美しさで聴かせるオケの合奏力が非常に優秀な素晴らしい名演。

今回聴いたのは、チャンネルクラシックスから出ているCDです。録音の際フィッシャーは「指揮台上で聴こえるような音で録音して欲しい。」という希望を出したそうです。
各楽器が実に明確でありながら響きのブレンド感も自然な優秀録音でした。
(2006.09.12)