「ラフマニノフの2番を聴く」32・・・デ・ワールト
「エド・デ・ワールト(1941 - )

アムステルダムでオーボエを学び、アムステルダム・コンセルトヘボウ管のオーボエ奏者経て、指揮者に転向後は1964年ミトロプーロス国際指揮者コンクールで優勝。バーンスタインとハイティンクのアシスタントを経て1967年ロッテルダムフィルの指揮者となりました。

ロッテルダムフィル音楽監督 1973 - 1985
サンフランシスコ響音楽監督 1977 - 1985
ミネソタ響   首席指揮者 1986 - 1995
オランダ放送フィル音楽監督 1989 -
シドニー響   首席指揮者 1995 - 2004
オランダ歌劇場 首席指揮者 1999 - 2004
香港フィル   首席指揮者 2004 -

デ・ワールトは、ロッテルダム時代にフィリップスの専属として目覚ましい量の録音を残していますが、80年代後半から次第にメジャーな表舞台から姿を消してしまったような印象です。デ・ワールトは若い頃からラフマニノフを積極的に取り上げ、交響曲の全集録音が2種、交響曲第2番の録音は以下の3種類があります。

・1977年  ロッテルダムフィル  スタジオ録音
・1996年  シドニー響      ライヴ録音
・2001年  オランダ放送フィル  スタジオ録音

シドニー響との録音は、来日公演のライヴでシドニー響の自主制作録音です。

・ ロッテルダムフィルハーモニー管弦楽団
(1977年6月 ロッテルダム デ・ドゥレーン   スタジオ録音)

デ・ワールトが若手の成長株として注目されていた時期のフィリップスへの録音。
今にして思えば、ラフマニノフの交響曲がさほど世間に認知されていなかった70年代に、若手のデ・ワールトを起用し全集録音をさせたフィリプッスの英断に感心します。

音楽の流れにうまく乗り、オケの磨き上げた透明な響きが印象的な演奏でした。
この演奏を聴いていると、地方オケにすぎなかったロッテルダムフィルが、デ・ワールトの音楽監督就任とともに飛躍的に実力が向上したことがわかります。

第1楽章は、丁寧でよく歌う序奏からいなせな気分の漂う主部が美しく、練習番号14前のMeno mossoから次第に加速。最後の一音にティンパニ加筆。
第2楽章も軽く明るい健康的に展開し、練習番号32後のmeno mossoは速めでModeratoもふくよかで気品の溢れた歌を聴かせていました。第3楽章の速い流れと自然な動き、第4楽章も軽やかで氷上を滑るような自然の動きで推移し後半のクライマックスもソツのない出来。

ロシア的なドロドロさはほとんど感じられませんがラフマニノフ特有の甘いロマンティックさが健康的なオヴラートに包まれて聴かせる爽やかさを感じさせる演奏でした。

今回聴いたのは、フィリップスのダブルシリーズの外盤CDで、オロスコの独奏によるラフマニノフのピアノ協奏曲第2番とパガニーニの主題による変奏曲とのカップリングです。

・ オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団
(2001年11月27 - 29日 アムステルダム MCOスタジオ スタジオ録音)
デ・ワールトの2度目の全集中の一枚。日本のEXTON制作のCDです。

曲への大きな共感と確信に満ちた余裕の演奏でした。
第1楽章主部のallegro moderatoは早いテンポ、軽やかな中に哀愁も漂い、間断なるテンポの変化の中にラフマニノフのためらいや憧れが見事に音化されています。リピート有り。フォルテも柔らかで軽い響き。最後の音のティンパニはなし。

第2楽章ではConmotoのテンポ変化の妙と肩の力が抜けた軽みの感じられる素晴らしい表現で聴かせます。練習番号38にティンパニ付加。最後のテンポの落とし具合も実にうまいものです。
音楽への大きな共感に満ちた第3楽章は色気よりも清楚な趣。
第4楽章は練習番号73から加速。練習番号89のPiu mossoの少し前からさらに加速を大きなクライマックスを築いていました。

若さと爽やかさが売りだった旧盤に、さらなる厚みと幅のある大人の雰囲気が加わっているのが魅力的な演奏でした。ただし旧盤に比べると、オケの反応に多少の鈍さが感じられます。


(2006.09.02)