「ラフマニノフの2番を聴く」21・・オーマンディー
「ユージン・オーマンディ(1899 - 1985)」

フィラデルフィア管の音楽監督だったオーマンディは、ミネアポリス響の音楽監督時代からラフマニノフと親交があり、作曲者と共演したピアノ協奏曲第3番の録音もあります。またラフマニノフ晩年の傑作、交響的舞曲はオーマンディとフィラデルフィア管に献呈されており、遺族の依頼で交響曲第1番の復活初演をおこなったのもオーマンディでした。

オーマンディーの「第2番」には4つの録音があります。

・1934年   ミネアポリス響
・1954年   フィラデルフィア管
・1959年   フィラデルフィア管
・1972年   フィラデルフィア管
1972年録音はカットなしの全曲盤です。

今回は59年と72年のスタジオ録音を聴いてみました。

・ フィラデルフィア管弦楽団
(1959年4月19日 フィラデルフィア スタジオ録音 )

オーマンディ3回目の同曲録音で、CBSに残した全集録音中の1枚。
手馴れた自然な音楽運びに、曲を知り尽くした者の強みを感じさせます。オケもゴージャスに鳴り響き第4楽章の吹き上がるような音の氾濫は見事なもの。

第1楽章Allegro Moderatoでレガートを僅かに掛けたヴァイオリンの羽毛のような軽やかさが印象に残ります。テンポも自然に揺れ、最後のティンパニの1発はなし。

第2楽章はかなり鋭角的な表現。Con motoのコルレーニョも明確。最後の部分のMeno
mossoのブラスのコラールにアクセントを付けるのが特徴的。練習番号38の19小節目の1拍めにティンパニの1発加筆。

弦楽器の豊麗な響きが楽しめる第3楽章は、さながら往年のハリウッド映画のよう。
速いテンポの第4楽章はさながら音の洪水、華やかな中にトランペットの3連符がギラリと響きます。練習番号60、85の主題の変わり目でテンポは段階的に落ちますが、終盤89のPiu mossoから急激に加速。

第1楽章練習番号3のヴァイオリンにコールアングレを重ねていました。所々で第2ヴァイオリンにヴィオラも重ねるなど、この響きの豊かさにはいろいろと秘密がありそうです。
リズムの鮮やかなキレ、ストレートで若々しい推進力満ちたオーマンディ全盛期の名演だと思います。カットの箇所はウォーレンシュテイン盤と同じ。

今回聴いたのはソニークラシカルから出ている全集物CD。この頃のCBS録音特有の乾いた薄い響ですが、曲想にはうまくマッチしていると思います。


・ フィラデルフィア管弦楽団
(1973年12月18,19日
      フィラデルフィア スコティッシュ・ライトカテドラル スタジオ録音)

RCAに残したオーマンディ4回目にして最後の録音。今まではカット版を使用していましたが、こちらは完全全曲録音。
職人的な手際のよさが感じられる演奏で、曲想に微妙な変化を付け冗長さを感じさせないのが見事。第2楽章で冒頭のホルンの主題が回帰する部分のアチェレランドなど実に鮮やかなものです。

第1楽章Poco piu mosso前のレガートや熟しきった果実のような第3楽章の甘さは、麻薬のような危険な香りのが漂う美しさ。第4楽章終結部でテンポを大きく落としながら巨大なクライマックスを築いていたのも印象に残ります。
しかし第4楽章の段階的なテンポの減速は旧盤ほどうまくいかず、不自然さが感じられました。
第1楽章の練習番号17のホルンにバスクラリネットを重ね、第1楽章の最後にはティンパニの1打を加えるなど、各所にオーマンディ独自の手が入っています。

爛熟したゴージャスな演奏ですが、あまりにもアメリカナイズされたこの解釈は、私にはくどい印象です。オーマンディのラフ2としてはストレートなCBS盤を私は好みます。

今回聴いたのはRCAの国内盤CDですが、CBS盤と比べるとレンジが狭く全体に丸い響きになっているのが気になりました。

以下がCBS盤とRCA盤の演奏時間とCBS盤のカットの箇所です。(  )はプレヴィンの1973年録音。

「第1楽章:16'30" 18'47" ( 18'59" )」
・ 練習番号3のAllegro moderatoの最初の2小節
・ 練習番号9の16小節めから10小節
・ 練習番号13の5小節目から6小節
・ 練習番号14から15の前まで
・ 練習番号17の17小節目のa tempo から18の前まで
・ 練習番号19の9小節目から8小節
・ 練習番号23の5小節めから10小節
・ 練習番号23の19小節めから4小節
・ 練習番号24の8小節めから練習番号25の3小節まで

「第2楽章:8'00" 9'36" (10'00")」
・練習番号40から42の前まで

「第3楽章:11'57" 12'58" (15'37")」
・ 練習番号50から8小節目
・ 練習番号53から55の前まで

「第4楽章:11'16" 14'43" (13'59")」
・ 練習番号61の9小節めから練習番号62の9小節めまで
・ 練習番号68から4小節
・ 練習番号69から7小節
・ 練習番号76から80の12小節めまで
・ 練習番号83の9小節めから4小節
(2006.05.16)