「シベリウスの2番を聴く」50・・・・独墺系の指揮者たち2 シュヒター
「ウイルヘルム・シュヒター(1911〜1974)」
N響の常任指揮者としてN響を徹底的にしごいた名トレーナー。
ボン生まれ、ハンブルクの北西ドイツ放送響、ケルンの北西ドイツフィルの指揮者。最後はドルトムント歌劇場の音楽監督。ベルリンフィルの来日公演では副指揮者としてカラヤンとともに来日した事もあります。

N響常任時代のシュヒターは練習が厳格なことで有名でした。放送録音の収録の際は、楽員がうんざりするほど同じ箇所を何度も何度も繰り返し演奏させ、その中から出来の良い部分のみを編集して放送するといった徹底ぶりだったそうです。
石丸寛著「それゆけ!オーケストラ」(1974年)には、その放送録音の様子が書かれています。

シュヒターのシベリウスの交響曲第2番は、N響を振った放送録音が少なくとも2種類あります。

・1959年
・1962年3月7日

1962年録音は、キングレコードのNHK交響楽団60周年記念LPボックスセットに含まれていました。

このセットには小澤征爾指揮の「トウーランガリラ交響曲」など非常に貴重な音源が含まれ、当時のレコード芸術にも広告が記載されました。定価が数万円だったことを今でも覚えています。しかしいかなる事情かは解りませんが一般発売は見送られ、ごく少数がN響の定期会員向けに販売されたようです。
極めてレア盤と化した音源で、私はかつて東京の中古レコード屋で実物を見かけたことがありますがとても手が出ない金額でした。

・NHK交響楽団
(1959年  東京 放送用ライヴ録音  第4楽章のみ)
シュヒターN響常任指揮者時代の放送用ライヴ。
聴いたのは1986年にNHKFMで放送された「N響の歴史」を紹介した特集番組のエアチェックテープです。残念ながら第4楽章のみのモノラル。

個別の奏者の力量には多少の差はあるようですが、アンサンブルの精度はかなり高い演奏です。相当厳しいシュヒターの指導が入っていたことが想像できます。
解釈そのものは武骨で実直なもの。

テンポは比較的遅め、第一主題の直前でぐっと溜めてスクエアなほどの三拍子の主題。付点8分休符を長めに取っていました。幾分かな釘流の野暮さ加減はやはり時代を感じさせます。
78小節での木管の一瞬の出遅れなど微妙な弦と管のずれが時々ありますが、これは編集の切れ目の部分かもしれません。
展開部に入る119小節からの静かな部分でファゴットを強調。主題再現の直前の143小節から微妙に加速、主題を大きく膨らませながら展開させる技はお見事。
172小節のトロンボーンにはチューバ付加。
テーマの再現部分で312小節からの大きな上り坂は巨人の歩み。
終結部348小節のa tempoでは、バスを大きく強調し雄大さを演出していました。

響きの密度が薄いのとpとppの区別がないといった欠点はありますが、50年代の日本のオケの演奏としては立派なものです。
(2011.09.06)