「シベリウスの2番を聴く」46・・・シッパーズ
「トーマス・シッパーズ(1930〜1977)」
アメリカ、ミシガン州カラマズー生まれのオランダ系。カーチス、ジュリアードの両音楽院に学び21歳で指揮デビューし23歳で早くもメトロポリタン歌劇場に登場しています。1963年にはアメリカ人としては初のバイロイト音楽祭に登場。

シッパーズはバーンスタインに継ぐ世代のアメリカ人指揮者のホープとして、アメリカで非常に注目され愛されていた指揮者でした。今でもオフィシャルサイトがあります。
オペラを中心に少なからずの録音がありますが、シンシナティ交響楽団の常任指揮者中に47歳の若さでガンにより死去。

・ ニューヨークフィルハーモニック
(1958年   ニューヨーク マンハッタン センター)
米コロンビアへのスタジオ録音。シッパーズが急速に注目され始めた頃の録音です。同時期に米コロンビアではバーンスタインによるシベリウスの交響曲全集の録音が進行中でした。

モダーンで歯切れの良いリズム処理、パンチの効いた迫力と思い切りの良い大胆な表現の連発でなかなか面白く聴けました。

第一楽章冒頭はスタイリッシュでチャーミングな木管の響きを聴かせながら、緻密で丁寧な音楽運びで進行。105小節から加速し200小節前後からの勢いに乗った盛り上がりは興奮させられます。241小節では大きなルバート。最後はせきこむようにな終結

大きくテンポが揺れる第二楽章冒頭ピチカート。クレシェンドともにテンポは速くなります。119小節のトランペットソロの入るあたりから早めにストリジェンドを開始。
166小節のpiu moderato largamenteのブラスの咆哮は激烈。180小節からAndante sosutenutoのあからさまな感情移入が嫌味に聞こえないのはシッパーズの人徳でしょうか。最後の小節の譜面上のトランペットのデクレシェンド指定は無視。

力強さと軽やかさとの見事な共存で聴かせる第三楽章に続くフィナーレは、煌びやかに盛り上げますが、トランペットの音に品格を欠くのが気になりました。
展開部前99小節のヴィオラ、チェロはいきなりのフォルテ。127小節に大きくルバートをかけ135小節から加速。再現部分は順調なテンポ運びとなり、指揮者もオケもノリノリの絶好調。熱くパンチの効いた終末の輝かしさはスポーツ的な快感をもたらします。

部分的には感心する部分もありますが、演奏全体としては多少まとまりを欠く印象がありました。ただオケの量感も充分、煌びやかな盛り上がりとライヴのような熱く勢いのある音楽運びに好感が持てます。

今回聴いたのは70年代後期にCBSソニーから発売されたLPです。響きにやや潤いの欠けるのが難点。
(2010.03.20)