「シベリウスの2番を聴く」34・・・フランス系の指揮者たち モントゥー
「ピエール・モントゥー(1875〜1964)」

弦楽四重奏団のヴィオラ奏者としてブラームスの面前で演奏し、グリーグやドビュッシー、ラヴェルとも親交があり「春の祭典」「ダフニスとクロエ」など20世紀の名曲の多くの初演を指揮した音楽史上に名を残すフランスの大指揮者。

シベリウスの交響曲第2番には2種の録音があります。

・ ロンドン響    1959年  スタジオ録音
・ ボストン響    1961年  ライヴ録音

・ ロンドン交響楽団
(1959年   ロンドン スタジオ録音)
ロンドン響の首席指揮者就任以前の録音。モントゥーのシベリウスは珍しく、正規録音はこの交響曲第2番のみです。

厳しいまでの引き締まった音響に満ちた世界。純音楽的で高い次元で結晶化された名演でした。

第一楽章は比較的遅いテンポで始まります。大らかにして風格充分。続く第二楽章のコントラバスとチェロのピチカートに乗るティンパニのクレシェンドがピチカートの音型と絶妙に連動。120小節のトランペットソロの歌い方は独特なもの。
167小節からのpiu molt allargandでは巨大な音響が炸裂し直後の弦楽器のピアニシモと大きな対比を形成しています。186小節のピアノ指定のコントラバスとチェロはメゾフォルテ気味で強調し、204小節から加速しつつ大きく歌います。

第三楽章も軽やかに進行しながらも音楽に深みが感じられるのが見事。中間部への移行部分のティンパニソロは比較的大きめに鳴らし、フィナーレへの移行は感動的に高揚。

第四楽章の主題部分ではチューバとホルンを強調。262小節でタメをつくりながら一挙に加速。289小節で一端音量を極端に落とし終末へのクライマックスへの巨大な坂を上り始めます。
317小節からテンポを速め、しだいに猛烈な速さとなり、多くの演奏ではテンポを落とす336小節でもそのまま突っ走り頂点を極めていました。
348小節 のa tempo部分は極端なほど速めですが、これはフィナーレ冒頭のテンポに回帰したからです。ここからコントラバスとチェロを強奏させ、この4小節間が嵐のようなすごい効果を上げていました。チューバのフォルティシモも凄まじく、輝かしいブラスによる圧倒的なフィナーレを迎えます。

モントゥーは私が最も好きな指揮者です。この演奏は名盤として世評の高いものですが、テンポの設定やアゴーギクが他の演奏に比べ非常にユニークで、初めて聴いた時にこの演奏のどこが良いのかさっぱりわかりませんでした。

ところが自分が演奏した後にこの演奏に接したとき、モントゥーが楽譜に書かれていることのみを信じ、虚飾を排し厳しいまでにひたすら純粋に音化していることにはじめて気がつきました。モントゥーの底知れぬ実力を今さらながら思い知らされました。

今回聴いたのはキングレコードから出ていたLPと、ユニバーサルから出ているCDです。
1959年録音としては優秀な音です。ユニバーサルのCDの方がより鮮明細部のディテールも良く聞こえ、このCD化は成功していると思います。

(2009.09.05)