「シベリウスの2番を聴く」58・・・北欧の指揮者たち6 オッコ・カムその2
・ ヘルシンキフィルハーモニー管弦楽団
(1982年2月4日 大阪フェスティバルホール ライヴ録音)
カムがヘルシンキフィルを率いての来日時のライヴ。

柔らかでしなやかな自然体。ローカルですっきりとした味わいの中に爽やかなテイストが漂います。これがカムの本来の持ち味かもしれません。

第一楽章冒頭から遅くゆったりとした開始。徐々に速めていきます。
音楽運びに余裕が有りスピード感も十分。Poco largamente直前でテンポを大きく落とし、大きく歌います。息の長い盛り上がりも自然。242小節のブラスのコラールのナチュラルな音にも好感が持てます。315小節のtenuto指示で大きくテンポを落としていました。

第二楽章ファゴットのメロディがティンパニの<>にあわせてテンポを揺らしていきます。
雪の積もった荒野をポツリポツリと一人でさまようような孤独感が漂います。
フォルティシモも刺激の無い柔らかな響き。
92小節のfffからpppの移行ではブラスを早めに減衰させて弦楽器のみを残し余韻を持たせていました。
179小節の第二部では軽い響きで淡々と進行。木管楽器群の溶け合ったオルガンのような響きも印象的。

軽快な動きの第三楽章では中間部のほのぼのとしたオーボエとフルートソロが印象的。
フィナーレのブリッジで大きく加速。
第四楽章24小節での二回目の第一主題でテンポを落とす。183小節から加速し、冒頭回帰の部分で主題をたっぷり歌わせます。
終盤への上り口、288−293小節ではヴィオラとチェロを消え入るようなほどのピアニシモで演奏させているため音楽が止まったかのようなサプライズ。
348小節のa tempoは、ファゴットを強調し野性味を演出。
最後のブラスのコラールもぴしっと雄大に決めていました。

オケはベルリンフィルほどの威力はなく、フィナーレでのトランペットのファンファーレがふらつくなどのライヴならではの傷はありますが、爽やかな響きと手馴れた柔軟な動きに好感が持てました。

今回聴いたのは、TDKオリジナルコンサートで放送されたFM東京収録の音源をCD化したものです。もともと商品化を前提とした録音ではなく、今となっては古さを感じさせますがナチュラルでバランスの良い聴きやすい音質でした。
(2012.06.04)