「巨人を聴く」20・・・・ミトロプーロスその2

・ニューヨークフィルハーモニック
(1960年1月9日 ニューヨーク カーネギーホール  ライヴ録音)
バーンスタイン時代のニューヨークフィルへの客演ライヴ。

1951年からニューヨークフィルの音楽監督となったミトロプーロスは、1957年に首席指揮者という肩書に変わり、1958年にはこの地位も辞任し、変わってバーンスタインがニューヨークフィルの音楽監督に就任します。

第一、 二楽章のリピートなし。第四楽章496小節のシンバルなし。
使用楽譜は1912年版(DP3)ですが、ワルターの演奏に近く1906年版の要素も各所に点在。
最後のホルンの補強はトランペット、トロンボーン各1本(録音が古く、トランペットの音は聞こえますがトロンボーンははっきりしません)

マーラーが記した楽譜の指示には極めて正確、第二楽章中間部のワルツや、第三楽章中間部の「さすらう若人の歌」第4曲の部分は、かなり自由にテンポを動かしていました。

ニューヨークフィルの鋼のようながっしりとしたアンサンブルを聴くと、ミネアポリス響とはオケのランクが上であることがはっきりわかります。

緊張感も有り、最後の盛り上げ方も老練な運びで終演後の聴衆は大いに沸いていますが、ミトロプーロスの他のマーラー演奏に比べると幾分醒めた気配を感じました。
曲への共感度の差でしょうか。

元はテープ収録だったのでしょうか、楽章間のインターバルがほとんどなく、まるで4つの楽章を切れ目なしに演奏しているかのようです。

第一楽章はゆっくり正確に腰を据えた演奏ですが、スタジオ録音ほどは遅くありません。
透明で美しく歌う第一主題に続く弦と管楽器の優しい対話も印象に残ります。
後半のブラス群による巨大なクライマックスでは、突入直前でぐっと溜めて、その後急速に加速、再び372小節でじっくり落としテンポを揺らしながら終結。

第二楽章冒頭は最初遅く5小節めから速くなりますが、スタジオ録音よりも自然な加速。
74−75、77−78小節のトランペットと、121小節と292小節のホルン付加は1906年版の特徴。
ティンパニのクレシェンド付加は、ワルターのように155小節からでなく、157小節から加えているのが珍しいと思いました。326小節のティンパニ有り。

トリオに入ってからテンポが大きく揺れ自由に遊びます。1拍めに入る時に微妙な間が入り、2拍を微妙に長めに演奏しているのが面白いと思います。

このCDでは、インターバルなしにすぐに第三楽章に入りますが、実際はどうだったのでしょうか。

第三楽章の開始から客席のノイズが多く不安げなざわざわ感、オーボエ二本ももどかしいような揺れ。ゆっくり歩む軍楽隊のパロディに続いて木管のカッコウを強調。
62小節で大きくテンポが揺れてティンパニの第1拍が微妙に遅れていました。

第四楽章は、落ち着いた堂々たるテンポで突き進みますが、ここに来ると録音の古さが気になりました。
ブラスの健闘が十分にマイクに入りきれてない分、演奏の冷たさが際立った印象です。

166小節から急かすようにアチェレランドし、続く175小節で柔らかく歌うのはスタジオ録音と同じ。191小節のクラリネットの2連符を強調して面白い効果を上げていました。最後の9小節では煽るように猛烈に加速して終結。

1906年版と同じ部分は、54,101小節のトランペットなし、489小節のフルート、オーボエなし。


今回聴いたのは1,10,6,8,9番収録のAriosoから出ているCD4枚組です。
60年のライヴとしては相応の音ですが、フィナーレでは古さが気になりました。
厳寒の1月のライヴで、聴衆の咳のノイズが盛大に入ります。
(2014.08.04)