その13 / 日本の指揮者たち(1)
朝比奈隆と山田一雄
ロシアの指揮者たちはしばらくお休みをして、ここで日本の指揮者たちの演奏を紹介 します。第1回は朝比奈隆と山田一雄。

朝比奈隆(1908〜)は現役最長老、ベルリンフィルやシカゴ響にも客演し日本指揮者界の重鎮としていまも 大活躍。演奏会では熱烈な追っかけファンが演奏終了後ステージ前に集まり、さながら 皇居前の一般参賀のよう。重厚なベートーヴェン、ブルックナーの交響曲には独特の魅力があります。師匠がR・コルサコフの弟子のメッテルだったので、グラズノフやチャイコフスキーなどのロシア物も定評があります。 朝比奈の録音には北ドイツ放送響を振った60年代の放送録音と創立以来常任指揮者である大阪フィルとの1981年ライヴ録音があります。 大阪フィルとの録音はこの指揮者らしい武骨なもの。フォルテシモにおける巨大なマスとなった金管の強奏はなかなかの凄みがあります。全体的に遅いテンポのロシアの指揮者たちと同傾向の演奏。しかし細部にアンサンブルのアラが目立つのはオケの合奏力に加えて棒にも責任がありそう、第1楽章など重い荷物を強引に引っ張っているような演奏で、 聴いていて疲れました。

山田一雄(1921〜1991) プリングスハイムに作曲を師事、いくつかの優れた歌曲も残しています。 ローゼンシュトックに指揮を学び1942年に指揮デビュー。 新響(現NHK響)の指揮者として活躍。「春の祭典」「ガイーヌ」をはじめ、多くの名曲の日本初演を手がけ、ショスタコーヴィッチの第五番の日本初演もおこなっています。 山田一雄は若々しくロマンチックで熱い演奏を聴かせ、ツボに嵌ったときは雄大な名演奏を聴かせました。 残念ながら山田一雄のこの曲の正式な録音は残されていません。今回は1986年名古屋フィルの定期演奏会でのFMエアチェックテープを聴いてみました。 これは名演。暗さを感じさせない早いテンポの爽やかで情熱的な演奏です。 第2楽章の粋で洒落た表現は名人芸の域。曲のところどころで見せる大見得も見事に決まっていました。曲全体のクライマックスを第3楽章に置いていて入魂の演奏を聴かせます。第4楽章のクライマックスもお手のものの素晴らしい演奏でした。

(2001.4.8)

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