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「展覧会の絵」を聴く37・・・デイヴィス、グーセンスとサージェント
今回は、イギリス人の三人の指揮者たちの演奏。

「コリン・デーヴィス(1927〜)」
クラリネット奏者としてBBC響やフィルハーモニア管の首席奏者を務めたコリン・デーヴィスは、指揮はほとんど独学で、クレンペラーの代役で「ドンジョバンニ」を指揮して成功、後にBBC響やバイエルン放送響の首席指揮者を歴任しています。
デイヴィスの演奏は、ロンドン響の実演で聴く事ができました。曲目はメンデルゾーンの交響曲第3番とエルガーの交響曲第1番、いずれも風格豊かな名演でした。

・ アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
(1979年 11月 スタジオ録音)
「テイユイリー」の絶妙な間は印象に残るものの、外面的な効果は皆無の優等生的な演奏。
オケの渋い響きのためか、どちらかの言えばロシア的な重い演奏でした。
デーヴィスの演奏を聴くときに感じることは、いずれも知的で整った演奏で、何度聴いても飽きの来ない演奏なのですが、ベートーヴェンやブラームスの交響曲のような絶対音楽には非常な強みを見せる反面、「展覧会の絵」のようなショーピース的な曲になると、面白みが足りないと思います。


「ユージン・グーセンス(1893〜1962)」
ロンドン生まれ、弟のレオンは著名なオーボエ奏者、妹二人もハーピストで録音も残っています。当初作曲家として出発し、後に指揮者に転向した後はロチェスターフィル、シンシナティ響の音楽監督。録音は近代音楽を中心に数多く残っています。
グーセンスはいまやほとんど忘れ去られた指揮者ですが、近代オーケストラ用の華麗で壮大な「メサイア」の編曲は今でも人気があります。

・ ロイヤルフィル
(1956年ころ  スタジオ録音)
中庸の美、エレガントなロイヤルフィルの響きを生かした演奏。どちらかといえばグーセンスが影響を受けたラヴェル風のカラフルな演奏です。オケの管楽器奏者は実に優秀で各所のソロは安心して聞いていられます。多少オケ任せで、締りに欠ける演奏ともいえますが、色彩感も豊かで、まとまりの良さでは評価したいと思います。



「マルコム・サージェント(1895〜1967)」
イギリスのスタンフォード生まれ、BBC響首席指揮者。サージェントの録音歴は長く、伴奏録音を含めると膨大な数の録音があります。特にイギリス音楽やシベリウスにキレの良い、気品のある名演を聞かせています。

・ ロンドン交響楽団
(1958年ころ スタジオ録音)
クールで整然とした演奏。「キエフの大門」の大きなクライマックスの手前でテンポをぐっと落とすところなど、外面的な効果を狙った部分もありますが、演奏の本質は冷めていて、なんとなく古めかしさ感じさせる演奏です。ロンドン響の輝かしさはここでも健在。
アクの強さとか個性の強さはありませんが、早いテンポで小気味の良い演奏でした。
(2002.05.31)
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