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「展覧会の絵」を聴く38・・・コンロン、デ・ワールトとハイティンク
今回は、オランダのオケを振った指揮者三人の演奏

「ジェームズ・コンロン(1950〜)」
ニューヨーク生まれ、ジュリアード音楽院に学び、メトロポリタン歌劇場やロイヤルオペラなど世界中のオペラハウスに客演。ロッテルダムフィル、ケルンギュルツニヒ管の首席指揮者も歴任し、現在パリ・オペラ座の首席指揮者。

・ ロッテルダムフィル
(1991年  スタジオ録音)
ムソルグスキーのピアノ原典版に基き、ラヴェル版に手を加えた注目すべき演奏。
したがって「ヴィドロ」はフォルティシモで開始し、「殻を被った雛鳥の踊り」のコケーッコは2回鳴きます。「サムエル・ゴールデンベルクとシュミイレ」の終結部もドレシシで終わります。
緻密にして壮大、清々しい健康さに満ちた爽快な演奏。颯爽としたプロムナード、音の響きが見事に整理された「カタコンブ」、壮大な「キエフの大門」など知的に整った楷書体の名演です。リズムのキレも良く、「殻を被った雛鳥の踊り」や「リモージュ」での木管楽器の内声部の生かし方など実にうまいものです。
「キエフの大門」の後半、微妙に音色を変化させながら壮大なクライマックスに持っていく部分も見事、終結部のティンパニもドラティ盤以来の精確さでした。

「エド・デ・ワールト(1941〜)」
アムステルダムコンセルトヘボウ管のオーボエ奏者として出発した後、指揮者に転向。
ミトロプーロス指揮者コンクールで第1位、ニューヨークフィルとアムステルダム・コンセルトヘボウ管の副指揮者となり、やがて32才でロッテルダムフィルの音楽監督、その後小澤征爾の推薦でサンフランシスコ響の音楽監督、その後ミネソタ響の首席指揮者、オランダ放送フィル、シドニー響の首席指揮者を歴任。
最近のデ・ワールトは、一時の華やかさに比べてあまり目立ちませんが、もともと深い音楽性を持った人であるだけに、近年円熟味を増し、オランダ放送フィルを振ったマーラーの交響曲全集など、燻し銀の名演でした。

・ロッテルダムフィル
(1974年 12月23日、27日 スタジオ録音)
デ・ワールト32才の録音。明るい響きの自然でのびやかな演奏。良く歌い柔軟な動きを見せる「古城」など、なかなか聴かせます。オランダでコンセルトヘボウ管に次ぐ水準を誇るロッテルダムフィルも好調で、残響を豊かに取り入れた録音とともに、聴いていて気持ち良い気分になれる演奏でした。難を言えば上品すぎて、いささか美しすぎるところでしょうか。


「ベルナルト・ハイティンク(1929〜)」
アムステルダム生まれ、26才でオランダ放送フィルの首席指揮者となり、31才でアムステルダムコンセルトヘボウ管の常任指揮者となり以後27年間の長きにわたりこの世界的なオーケストラを率いました。ハイティンクはどちらかというと地味な指揮者ですが、着実に実力を蓄え、今や世界の指揮者界を代表する大指揮者となりました。

・ アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
(1962年 2月  スタジオ録音)
ハイティンクがコンセルトヘボウ管の常任指揮者になってまもなくの録音。
金管楽器の響きが煌びやかで、フランス的な華やかさに満ちた演奏です。幾分直線的で一本調子のところもありますが、コンセルトヘボウ管の上手さに助けられて、高水準の演奏となりました。ただトランペットの響きが幾分強調されすぎで、全体のバランスを崩しているのが惜しいと思います。この当時のハイティンクは、まだオケのドライヴ能力に限界があったようです。
(2002.06.01)
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