back top next
「惑星」を聴く10・・・マリナーとコリン・デーヴィス

今回はコンセルトヘボウ管、ベルリンフィルといったイギリス国外の名オーケストラと録音した、サーの称号を持つ二人のイギリスの指揮者の「惑星」です。

「サー・ネヴィル・マリナー(1924〜)」

・アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団、アンブロジアンシンガース
(1977年 6月22日〜24日 スタジオ録音)
マリナーが本格的なシンフォニーオーケストラの名曲を録音した最初期の録音。
確かこの録音が行われる以前の1976年ころに東京フィルの定期に登場し、ヴィヴァルディの四季」と「惑星」を振りました。当時のマリナーといえばオルガンを加えた「四季」が大変な評判で、バロック音楽の指揮者として有名でしたので、この時の演奏がFMで放送された時も「惑星」はあまり期待せずにいたのですが、実際は東京フィルからスケールの大きな壮大な演奏を引き出していたのを今でもはっきり覚えています。
この録音もなかなか壮大な演奏となりました。コンセルトヘボウの長めの残響をうまく取り入れたフィリップス特有の録音も良く、“木星"や“土星"のクライマックスなど、艶やかで豊麗な響きが広がります。解釈自体はごく平均的でこれといった大きな特色は感じられませんが、しなやかな“金星"“水星"、奥行きのある“海王星"など、名オーケストラの威力を十二分に引き出した、明快でなかなか楽しめる演奏となりました。

「サー・コリン・デーヴィス(1927〜)」
現代イギリスを代表する名指揮者コリン・デーヴィスは、ベルリンフィルを振って「惑星」を録音しています。

・ベルリンフィルハーモニー管弦楽団、ベルリン放送女声合唱団
(1988年11月9日〜13日 スタジオ録音)
ベルリンフィルとしては、カラヤン以来の「惑星」の録音。カラヤン盤に聴かれた消え入るようなピアニシモから巨大なフォルティシモまでの、ダイナミックレンジの広さを誇った演奏とは対照的で、こちらもマリナーと同様に中庸の美徳を生かした中に風格の豊かさを見せた余裕の演奏でした。ただ、オーケストラの響きには厳しい近寄り難い冷たさも感じられて、辛口の硬派な演奏だと思います。


(2002.08.31)
back top next