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「惑星」を聴く11・・・ハンドリー、ヒコックス、ボートンとアシュレイ

今回は、国内で廉価盤で入手可能な、イギリスのローカルな指揮者三人と、正体不明の謎の指揮者アシュレイの「惑星」。
「ヴァーノン・ハンドリー(1930〜)」
エンフィールド生まれ、ギルドホール音楽院で指揮を学び、王立音楽院でボールトの助手。
スウェーデンのマルメ響の首席指揮者の後、北アイルランドのアルスター響の首席指揮者として、イギリス音楽の優れた録音を残しています。

・ロイヤルフィルハーモニック
(録音年月日不明 デジタル録音)
録音年はおそらく90年代の廉価盤シリーズ、ロイヤルフィルハーモニックコレクションの一枚。ボールトの助手ということもありますが、深い共感に満ちた優れた演奏を聴かせます。ヴァイオリンを両翼に配置し、対向するヴァイオリンが美しい効果を上げています。、ブラスを思いきり鳴らした爽快な演奏で、繊細さにも欠けていなく、鮮明な録音と合間って心地よい演奏となりました。“木星"の中間部でバスクラとコントラファゴットがこれだけ意味深く響いてくる録音はありませんでした。私は600円ほどで購入しましたが、これは演奏録音とも良く、お買い得な一枚。

「リチャード・ヒコックス(1948〜)」
ストッケンチャーチ生まれ、合唱指揮者として有名で、ロンドン響合唱団の指揮者として
コリン・デーヴィスやプレヴィンの下で数多くの優れた録音を残しています。

・ロンドン交響楽団、合唱団
(録音年月日不明 デジタル録音)
こちらも録音日不明の廉価CD。テンポを大きく動かし“火星"の終結部にスネアドラムのハイハット音を加えるなど、かなり表面的な効果を狙った演奏。特に弦楽器の旋律線をずり上げた“金星"は聴いていてあまり心地よいものではありませんでした。
ロンドン響のブラスセクションはさすがに輝かしい出来。

「ウイリアム・ボートン(1948〜)」
バーミンガム生まれ、祖父は作曲家、両親も音楽家という音楽一家。ギルドホール音楽院
で指揮とチェロを学び、BBC響、ロイヤルフィルのチェロ奏者の後、イギリス弦楽オーケストラを組織し、弦楽作品を中心としたイギリス音楽や北欧音楽の数多くの録音を残しています。

・フィルハーモニア管弦楽団、合唱団
(1988年  スタジオ録音)
随分と軽量級の御気軽路線の演奏。“木星“"火星“でのあまりにも早いテンポ運びに驚きました。各楽器のソロは流石にうまくて“火星"のユーフォニウムソロは最高の出来、楽しさに溢れた“天王星"はそれなりに説得力があるものの、いまひとつ演奏全体としては、影の薄い印象でした。

「ロバート・アシュレイ」
経歴、出身ともに不明の謎の指揮者。はじめは架空の幽霊指揮者かと思いましたが、30年ほど前にデッカから「熊蜂の飛行」などの軽い音楽の曲集が出ていたので、実在の指揮者だと思います。

・ロンドンフェスティバル管弦楽団
(録音年月日不明)
これはジャンボエンチョー(地元のDIYショップです。)のワゴンセールの中で450円で見つけた得体の知れないCD。オケは録音用のフリーランスオケで、映画音楽の録音用オケとして時々目にする事があります。ロンドンのフリーランサーの演奏家たちはなかなかに優秀で、この演奏もアンサンブルのまとまりも良くソロもうまいし、予想外に楽しめる演奏でした。アシュレイの指揮振りも、各曲の聞かせどころをうまく押さえた老練なもので、“木星"などスケールの大きな音楽作りが感動的ですらあります。
ここで面白かったのは、低予算で録音を完成させるためだったのでしょうか、特殊楽器を省略していることで、バスオーボエとアルトフルートのパートをバスクラが吹いています。
このようなことはめったにないだけに、これはなかなか貴重な体験でした。


(2002.09.01)
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