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「第九を聴く」14 ドイツ正統派の指揮者たち シュミット=イッセルシュテット
ハンス・シュミット=イッセルシュテット(1900〜1973)
ベルリン生まれのシュミット=イッセルシュテット。本名はハンス・シュミット。
ウッパタールの練習指揮者から始まり、ロストック、ダルムシュタットの各歌劇場の
指揮者を歴任、その後30代でハンブルク国立歌劇場の首席指揮者となり、1942年には
ベルリン・ドイツ歌劇場の総監督に就任しています。1945年にはハンブルクの北ドイツ放送交響楽団の創設に深くかかわり、戦争でドイツ各地に散り散りになっていた優秀な演奏家たちを集め、このオーケストラを短期間で世界的なオーケストラに育て上げました。
ベートーヴェンの交響曲録音は、ウィーンフィル初のステレオ録音全集を完成しています。
第九は北ドイツ放送響との晩年のライヴも残されています。

ウィーンフィル、ウィーン国立歌劇場合唱団、
S:サザーランド、A:ホーン、T:キング、Br:タルヴェラ  
   (1965年12月、 )
大手レコード会社デッカが、60年代に会社の威信を賭けて取り組んだウィーンフィルによる初のステレオによるベートーヴェン交響曲全集中の1枚。
演奏は遅いテンポで、ウィーンフィルの柔らかで美しい響きを最大限に生かした演奏です。当時は良いステレオ録音の第九が少ないこともあって、代表的な第九の演奏として定評のある録音でした。全体としてはノーブルでバランスのとれたまとまりの良い演奏ですが、今となっては指揮者の個性がオケの中に埋没してしまって、なんとも平凡な印象を持ちました。歌手達はオペラで活躍した当時のトップスターたちですが、第九となると、どうも上手く歌いすぎで違和感を感じてしまいます。合唱は極めて優秀。オーケストレーションの変更は第2楽章や第4楽章を中心とした常識的なものですが、第1楽章の70小節めにホルンの上昇音型を加えていました。

北ドイツ放送交響楽団、ハンブルク国立歌劇場合唱団、
S:ドーナト、A:エーリン、T:ホルヴェーグ、Br:ゾーティン  
   (1970年  ライヴ)
自ら創設したオケを率いたイッセルシュテット晩年のライヴ。渋くドスの利いたオケのダークな響きを生かしたドイツ的な第九。早いテンポの推進力のある演奏で、特に第4楽章の後半は感動的な高揚を見せ、オケと合唱団も熱く燃えた白熱の名演。ライヴでありながらアンサンブルの乱れもなく、イッセルシュテットの格調の高い音楽作りが楽しめる素晴らしい演奏でした。
(2001.10.06)
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